「薬剤師が勤め先の外で働くのって、決まりがあるのかな」
調剤薬局で正社員として働いていて、来年は管理薬剤師になる予定。同僚が勤め先以外でも働いていると聞いて、薬剤師にはどんな決まりがあるのか、管理薬剤師になると何が変わるのかが気になっている。
薬剤師の副業は、自分が管理薬剤師かどうか、公務員かどうか、勤め先の決まりの3つで見ると、整理しやすくなります。法令と厚生労働省のガイドラインをもとに、順に見ていきます。
30秒でわかる結論|薬剤師の副業
- 管理薬剤師でない薬剤師なら、ほかで働くことを制限する条文は、薬機法・薬剤師法などにはありません。
- 管理薬剤師は、都道府県知事などの許可がなければ、その薬局以外で、仕事として薬事の実務につけません。許可は例外的な扱いです。
- 公務員の薬剤師は、報酬を得てほかの仕事をするのに許可が要ります。
- 会社員なら、就業規則と、雇われて働く場合の労働時間の通算も確かめます。
管理薬剤師でなければ、薬の法律に制限はない
医薬品医療機器等法・薬剤師法・薬局の体制を定める省令には、管理薬剤師でない薬剤師がほかの場所で働くことを制限する条文はありません。
省令が決めているのは、薬局の側の体制です。たとえば、開店時間中は、その薬局で調剤をする薬剤師が常に勤務していることです。

管理薬剤師は、許可がなければ兼務できない
薬局の管理者(管理薬剤師)は、その薬局以外の場所で、業として薬局の管理その他の薬事の実務につくことができません。ただし、その薬局がある都道府県の知事(保健所のある市・特別区は市長・区長)の許可を受けたときは別です。
ドラッグストアなどの店舗管理者も、同じ決まりです。
副業先で管理薬剤師を頼まれた場合も同じです。引き受けると、今度は本業の薬局で働くのに許可が要ります。管理薬剤師になる予定があるなら、勤め先の外での仕事は、その薬局の管理の仕事と両立しない場合があることを知っておきましょう。
厚生労働省の通知では、許可が認められうる場合として、次が挙がっています。
- 非常勤の学校薬剤師を兼ねる場合などで、管理者の業務に支障がないとき
- 薬局の営業時間外の夜間・休日に、地域の輪番制の調剤をする場合
- へき地で管理者を確保しにくい場合に、営業時間外にほかの薬局で働く場合
通知は、兼務の許可は例外的な扱いとするよう求めています。許可するかは、都道府県などが地域の実情や個別の事情を見て判断します。
管理薬剤師の仕事は、「管理薬剤師とは?」にまとめました。
公務員の薬剤師は、許可が要る
国家公務員は、報酬を得てほかの仕事をするには、内閣総理大臣と所属する役所の長の許可が要ります。地方公務員も、任命権者の許可を受けなければ、報酬を得てほかの仕事をすることはできません(非常勤の職員は一部を除き対象外)。
※ 病院で働く薬剤師が公務員に当たるかは、勤め先の法人の形で違います。自分が当たるかは、勤め先に確かめましょう。
会社員なら、就業規則と労働時間
厚生労働省のガイドラインは、会社は原則として副業・兼業を認める方向が適当としています。そのうえで、会社が制限できる場合として、次の4つを挙げています。
- 本業の仕事に支障がある
- 仕事の秘密がもれる
- 競業で会社の利益が損なわれる
- 会社の名誉や信用を損なう、信頼関係をこわす
ほかの薬局などに雇われて働く場合は、本業と副業の労働時間を合わせて数えます(通算)。業務委託など、労働基準法が適用されない働き方は、通算されません。

勤め先の外で働く決まりは、管理薬剤師かどうかと、勤め先の就業規則で変わります。先に確かめておきましょう 🌿
単発の派遣は、原則できない
派遣会社に30日以内の期間で雇われて派遣される「日雇派遣」は、原則として禁止です。薬剤師の仕事は、例外として認められる業務に入っていません。
例外として認められるのは、次の人です。
- 60歳以上の人
- 大学・専門学校・高校などの学生(定時制の課程に通う人や、休学中の人などは除く)
- 本人の1年分の収入が500万円以上の人(主に配偶者などの収入で生活している人は、世帯の合計が500万円以上)
この1年分の収入には、本業の給与も含みます。
また、病院・診療所などでの調剤は、派遣が原則できません。薬局での調剤は、禁止の場所に入っていません。派遣で働く場合の全体は、「薬剤師の派遣とは?」にまとめました。
※ 農林業以外で働く人のうち、副業がある人は4.8%です(2022年・総務省)。国の統計では、薬剤師に限った数字は出ていません。
勤め先の外で働く前に、確かめること
- 自分が管理薬剤師か:管理薬剤師なら、兼務には都道府県などの許可が要る。
- 公務員か:公務員なら、兼業に許可が要る。
- 勤め先の就業規則:副業の届出や、制限される場合が書かれていないか。
- 働き方の形:雇われて働くなら、労働時間が通算される。派遣なら、30日以内の単発は原則できない(本業を含めた1年分の収入が500万円以上などは例外)。病院・診療所での調剤は派遣できない。
まとめ:今日やることは1つだけ
勤め先の就業規則で、副業・兼業について書かれた項目を探して読む。 届出が要るか、制限される場合が何かがわかれば、次に何をすればいいかが決まります。
- 管理薬剤師でない薬剤師なら、ほかで働くことを制限する条文は、薬機法・薬剤師法などにはありません。
- 管理薬剤師は、知事などの許可がなければ兼務できません。
- 公務員は、兼業に許可が要ります。
- 30日以内の日雇派遣は原則できません(本業を含めた1年分の収入が500万円以上などは例外)。
※ 参考にした資料
- 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
- 厚生労働省「薬局の管理者の兼務許可の考え方について」(平成31年3月20日)
- 厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定)
- 労働基準法・国家公務員法・地方公務員法
- 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律・同施行令・同施行規則
- 総務省「令和4年 就業構造基本調査」

